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胃内視鏡検査(胃カメラ) 病理結果集計
(2018~2020)

これまで当院で行った胃内視鏡検査(胃カメラ)で、生検を行った結果を集計しました。

当院のブログで、一番参照の多いページが、2年前の記事で、胃カメラの生検病理結果についての記事でした。

多分ですが、胃カメラの検査後に担当医から「生検しましたので、癌かどうか結果が分かるのは後日になります」と説明を受けた患者さんが、「一体何%くらいの確率で自分は胃癌なんだろうか」と不安で仕方なくなり検索され、当院ブログにたどり着いたのだと思います。

結論から申し上げますと、当院を生検を受けられた方は、5%の確率で癌の結果でした。ただし、施設によってその確率は異なります。それは、施設によって生検率が異なるからです。

当院での生検結果をお示しします。

胃内視鏡検査(年度) 2018 2019 2020
進行食道癌 0 0 1
早期食道癌 0 0 0
食道異型上皮 2 5 2
食道平滑筋腫 1 0 0
好酸球性食道炎 0 0 2
進行胃癌 3 6 1
早期胃癌(腸型) 0 1 2
早期胃癌(胃底腺型) 0 0 1
胃腺腫 0 3 2
胃内視鏡検査数 562 958 1056
生検数 60 97 81
生検率 (%) 10.7 10.1 7.7
生検有所見率(%) 10.0 15.5 13.6
癌発見率(%) 0.53 0.73 0.47
陽性反応適中度(PPV) 5.00 7.22 4.94

2019度の進行胃癌発見数が際立っていますが、例年、癌発見率は0.5%前後で推移しています。

話が少しそれますが、10年くらい前と比べて、この数値はやや少ない印象です。全国でも、2011年から2016年にかけての5年間で胃癌患者は10%も減少しています。

理由として、これまで胃・十二指腸潰瘍にしか保険適応が無かったピロリ菌の検査・治療が、2013年から慢性胃炎に対しても適応適応拡大となり、多くの患者さんが治療を受けられるようになったことが大きいと言われています。

また、注目すべき点として、2020年度には胃底腺型胃癌の患者さんが1名見つかっていることです。

これは、ピロリ菌が一度も感染したことの無い人にも発生するタイプの胃がんで、最近報告が増えてきています。

これまでは学会でしか見たことのないような珍しい癌でしたが、ついに当院でも目の当たりにするようになり、ピロリ菌の感染が無い患者さんにも、今後注意が必要と思われます。

好酸球性食道炎も2020年に2名見つかりました。これも近年アレルギー疾患が増えてきたことで、診断する機会が増えてきました。内視鏡での所見が軽微で、時には見た目は正常の場合もあるので、内視鏡医が病気のこと理解した上で、患者の症状から疑って検査しないと決して診断されることの無い病気です。

話をもどします。

生検は、胃癌の診断のためには欠かせない検査です。しかし生検をすると、保険が3割負担の方で窓口負担が5000円も増えてしまうので、当院ではなるべく必要最小限となるよう心がけています。

以下の表1,表2は、金沢市医師会の大野健次先生が2011年にまとめられた論文から転載させていただきました。

表1-生検率別の医療機関数と検診者数

表1は、医療機関によって生検率が0~60%まで大きくばらつきがみられたという結果です。

表2-生検率別の陽性反応的中度と癌発見率

表2は、生検率が10-15%を超えると、それ以上生検率を増やしても、癌発見率は上がらないという結果です。

表2にある陽性反応適中度(PPV)とは、数値が高いほど無駄なく生検できたという意味ですが、生検率が15%を超えてくるとPPVが下がり、(故意か、または内視鏡医の実力不足により)無駄な生検が増えて、病院が無駄にお金を儲けていることが分かります。

つまり、この論文では、生検率10-15%、PPV5%、癌発見率0.58%のところが、最も精度の優れた胃癌検診だと結論づけています。

当院での生検率、PPV、癌発見率も、この基準に一致していますので、精度の優れた内視鏡検査を行うことが出来ていると思います。

(2020年度は、生検率、癌発見率とも例年よりやや落ちていますが、これは新型コロナウイルス感染症の影響で、高齢者の胃がん検診受診者数が減り、代わりに緊急事態宣言のストレスで若い方が多く胃の不調を訴えて胃カメラを受けられたためです。そのため生検率は下がっても、PPVは及第点です。)

表1を見ると、生検率0%の病院もあります。これは、健診と健康保険との兼ね合いで、健診では生検を行わない方針なのだと思われます。逆に、表1から、生検率20%を超える医療機関が30施設以上もあったことは驚きました。

生検率は、公表していない医療機関がほとんどですが、もし公表しているところがあれば、胃カメラ受診先の選択の基準に利用していただけると良いと思います。

生検率が分からなくても、毎年同じ医療機関で胃カメラを受けていて、毎年生検をされ異常なしと言われ続けているような場合は、営利目的か何かなので、別の病院を探した方がいいと思います。

最後に、冒頭で、当院で生検を行った方で胃癌と診断された確率は5%と報告しましたが、実は多くの内視鏡医は、胃癌であれば生検する前に99%近い確信をもって生検しています。

逆に生検しても癌と診断されなかった95%の方は、「99%正常と思うけど、100%と言い切れない所見なので」生検をされた方です。

なので、本当の結論は、医師が「おそらく胃癌ですので、生検をしました」といった場合の癌の確率は99%以上、「おそらく正常ですが、念のため生検しました」といった場合の癌の確率は1%未満、と言えるでしょう。

参考になりましたら幸いです。