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おおの内科日記

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)病理結果集計(2018~2021)

2022年07月11日

2021年度までに、当院で行った大腸内視鏡検査(大腸カメラ)での、生検またはポリープ切除の病理結果を集計しました。

大腸内視鏡検査(年度)2018201920202021
進行大腸癌7365
早期大腸癌(sm2以深)1331
早期大腸癌(sm1)6754
大腸腺腫191429526836
SSA/P26677075
鋸歯状腺腫(TSA)0522
過形成性ポリープ162344107
炎症性ポリープ2224
若年性ポリープ3141
Peutz-Jeghersポリープ0100
平滑筋腫0110
カルチノイド0130
潰瘍性大腸炎12131418
クローン病1010
虚血性結腸炎713178
大腸内視鏡検査数4166757861014
ポリープ切除術件数142282338463
ポリープ切除病変数2455396571029
過形成性ポリープ切除率 (%)6.54.36.710.4
癌発見率(%)3.41.91.81.0

昨年度は、「進行」大腸癌が5名、「早期」大腸癌が5名、当院で発見されました。

「進行」と「早期」の違いは、胃癌と同様、「早期」と比べて「進行」は癌が転移している可能性が高い、という意味です。

「早期」大腸癌は、便潜血陽性の精査で来院された方が多く、一方「進行」大腸癌は、「急にひどい便秘になった」、「血便が続くようになった」など自覚症状が出て来院された方が多い印象でした。

便潜血検査は、便の中にわずかに紛れた血液成分を見つける検査です。非常に簡便な検査ですが、意外にも大腸癌患者の8割を見つけ出す、優れた検査でもあります。

さらに毎年便潜血検査を行えば、大腸癌患者の9割を発見することが出来ると言われています。

便の検査は、汚いイメージや手間の問題もあり、敬遠されがちですが、「腫瘍マーカー」よりも大腸癌を高い精度で発見しますので、40歳を超えたら、是非毎年自治体の「大腸癌検診」で便潜血検査を受けてください。

各務原市では18歳~39歳の方も、「ヤング健診」で便潜血が受けられます。

大腸癌は、早ければ20代でも発症することがありますし、特に身内に大腸癌の方がいるような場合には、積極的に便潜血検査を受けるようにしましょう。

病理結果で最も数が多いのが「大腸腺腫」ですが、これは、放置すると大腸癌になるため切除が必要なポリープです。他にも「SSA/P」「鋸歯状腺腫」などが癌化するポリープになります。

良性のポリープが、今後何年かけて大腸癌に変わっていくのかは、実はあまりよく分かっていません。

大腸腺腫の中でも色々あり、「軽度異型」より「高度異型」の方が癌化しやすく、「管状」よりも「絨毛状」の方が癌化しやすくなります。

「軽度異型」「管状」腺腫は、ほとんどが数年たっても大きさが変わらないですが、前年に2mm程度だったものが、1年で10mm近くまで増大していたケースもあり、予測がつかないことがあります。

5mm以下のポリープは当分癌化しないという予測のもと、切除しない方針の医療機関もありますが、当院ではサイズよりも、ポリープの性質を重視し、「腺腫」「SSA/P」「鋸歯状腺腫」についてはサイズが小さくても積極的に切除するよう努めています。

将来大きくなって、悪性化する可能性のあるポリープを、サイズがまだ小さいからと言って、何年にもわたって体に保持し続けるのって、精神的な負担が大きいですよね。

「過形成ポリープ」は癌化することは無いと言われていて、切除が不要な病変ですが、今年は107病変も切除しています。この107病変はすべて、内視鏡所見上は「SSA/P」を疑って切除したものです。

以前のブログで触れていますが、「SSA/P」と「過形成ポリープ」は内視鏡所見で見分けるのが非常に困難です。

また、過去に当院で「SSA/P」を切除された事のある患者で、今回も全く同じ見た目のポリープがあり切除したところ、今回は「過形成ポリープ」と病理診断されたケースも数多く見られました。

顕微鏡で見ても、「SSA/P」と「過形成ポリープ」は本当に見分けがつかず難しいです。

最近では「過形成ポリープ」が悪化したものが「SSA/P」だという話もあり、「過形成ポリープ」の安全神話も揺らいできています。

病理診断をされる病理医の先生の間でも、診断にバラツキが多く、ほとんど「過形成ポリープ」と診断されてしまう先生もおられ、頭を悩まされています。特に昨年は「過形成ポリープ」派の病理の先生が多かった印象です。

大腸ポリープは、1回の治療で1個だけ切除しても、複数個同時に切除しても、治療費はほぼ変わりません。

1個だけポリープがあって、それが「SSA/P」か「過形成ポリープ」か区別がつかない場合には、治療費のことを考え、観察だけにして1~2年後再検査としています。

逆に、「大腸腺腫」を治療した患者で、同時に「SSA/P」か「過形成ポリープ」か迷う病変があれば、切除しても治療費が変わらないのめ、チャンスとばかりについでに治療してくるように心がけています。

ポリープの切除の個数が多いほど治療に時間はかかるのに、治療費は変わらないため、1回に2~3個までしか切除しないと決めている医療機関もあります。

当院では個数の上限は設定せず、必要な病変は出来る限り1度ですべて切除しています。1度で20個近くポリープ切除した方も少なからずおられます。

引き続き、患者さんの経済的負担を考慮しつつ、最善の治療を行っていきたいと考えています。

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