大腸内視鏡検査(大腸カメラ)病理結果集計(2018~2022)
大腸内視鏡検査(年度) | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
進行大腸癌 | 7 | 3 | 6 | 5 | 10 |
早期大腸癌(sm2以深) | 1 | 3 | 3 | 1 | 1 |
早期大腸癌(sm1) | 6 | 7 | 5 | 4 | 7 |
大腸腺腫 | 191 | 429 | 526 | 836 | 801 |
SSA/P | 26 | 67 | 70 | 75 | 114 |
鋸歯状腺腫(TSA) | 0 | 5 | 2 | 2 | 8 |
過形成性ポリープ | 16 | 23 | 44 | 107 | 100 |
炎症性ポリープ | 2 | 2 | 2 | 4 | 3 |
若年性ポリープ | 3 | 1 | 4 | 1 | 4 |
Peutz-Jeghersポリープ | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
平滑筋腫 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 |
カルチノイド | 0 | 1 | 3 | 0 | 3 |
潰瘍性大腸炎 | 12 | 13 | 14 | 18 | 21 |
クローン病 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
虚血性結腸炎 | 7 | 13 | 17 | 8 | 6 |
大腸内視鏡検査数 | 416 | 675 | 786 | 1014 | 1209 |
ポリープ切除術件数 | 142 | 282 | 338 | 463 | 506 |
ポリープ切除病変数 | 245 | 539 | 657 | 1029 | 1030 |
鋸歯状病変診断一致率(%) | 0.6 | 0.7 | 0.6 | 0.4 | 0.5 |
癌発見率(%) | 3.4 | 1.9 | 1.8 | 1.0 | 1.5 |
2022年度は合計1209件の大腸内視鏡検査を実施し、うち506件でポリープ切除を行いました。
「大腸腺腫」は最も一般的なポリープで、将来悪性化するため切除が必要です。1個だけ見つかる方もいれば、たくさん出来ていて、同時に13個も切除した方もおられました。
昨年度は進行癌が多く見つかった印象がありました。コロナ禍で大腸癌検診の受診控えが実際にあったためだと思われます。
「進行癌」が見つかった方は51歳~86歳までで、平均70歳、男女比は1:9でした。
「早期癌」が見つかった方は44歳~69歳までで、平均58歳、男女比は3:5でした。
「早期癌」は若い方で多く、「進行癌」は高齢の方に多い傾向がありました。
また、大腸癌は男性に発生しやすいにも関わらず、集計上は女性にかなり偏っていました。
これは、現在の日本では企業勤めの男性が多く、企業検診で便潜血検査を受ける機会が多いためだと思われます。
企業検診で便潜血検査を受ける機会がない方は、市町村が実施する大腸癌検診が各医療機関で毎年受けられます。
しかし、検診を受診勧奨してくれる企業と異なり、市町村の検診は完全に任意であるため、どうしても検診受診率が低くなってしまいます。
大腸癌で亡くなる方を減らすためには、市町村は、企業検診同様にもっと強く受診勧奨する必要があります。
癌発見率は昨年につづき低水準でした。
これは良いことで、過去に当院で大腸検査を受けられた方が、その後も定期的に検査を受けに来ていただいているので、ポリープを切除することで大腸癌の発生を防げているからです。
表中に「カルチノイド」とあります。この病気は、現在では「神経内分泌腫瘍」と改称されましたが、「大腸腺腫」同様、大きくなると悪性化する病気です。
昨年度「カルチノイド」が見つかった3名は、33歳女性・44歳女性・64歳男性で、若年女性に多くみられました。
今年度も30代前半の女性で「カルチノイド」が発見されており、若い方でも油断は禁物です。
「潰瘍性大腸炎」は免疫の異常で引き起こされる大腸の病気で、難病に指定されています。
ある時、突然の下痢症状とともに血便が出るようになって発症します。
昨年度当院で新規に診断された方は合計21名、うち男性9名、女性12名でした。年齢は16歳~60歳まで幅広く、平均は37歳でした。
若い世代に多い病気のイメージがありますが、どの年代にも発症しますので、油断禁物です。
「鋸歯状病変」とは、「過形成ポリープ」と「SSA/P」の総称です。
「過形成ポリープ」は、将来も癌化しないといわれているため、内視鏡画像の見た目だけで確信をもって診断できれば切除しなくて済み、その結果患者さんの金銭やお体への負担を減らすことができます。
「SSA/P」は将来癌化するため、見つけたら切除する必要があります。
しかしながら「過形成ポリープ」と「SSA/P」とは内視鏡では非常に見分けが難しいです。
基本的に鋸歯状病変は「SSA/P」を疑う場合しか切除しませんので、「過形成」の診断結果になった病変は、当院の内視鏡診断と一致していなかった、という事になります。
この「鋸歯状病変診断一致率」を極力100%に近づけることを目標に取り組んでいます。
昨年度から、「鋸歯状病変診断一致率」が下がってきており、診断技術が未熟なのかと悶々としていました。
とは言え、昨年度「過形成ポリープ」を切除された患者さんのほとんどは「大腸腺腫」や「SSA/P」も一緒に切除されており、同時切除の場合は金額が変わらないため、追加の負担は発生していません。
調べていくうちに、「鋸歯状病変診断一致率」は病理医の先生によって、大きく差があることが分かってきました。
鋸歯状病変 2022年度 | 過形成 | SSA/P | 合計 | 診断一致率 |
病理医A | 10 | 31 | 41 | 0.76 |
病理医B | 38 | 25 | 63 | 0.40 |
病理医C | 12 | 37 | 49 | 0.76 |
病理医D | 28 | 4 | 32 | 0.13 |
病理医E | 6 | 10 | 16 | 0.63 |
病理医F | 6 | 7 | 13 | 0.54 |
全体合計 | 100 | 114 | 214 | 0.53 |
病理医B,D以外の合計 | 34 | 85 | 119 | 0.71 |
ある病院の内視鏡センターの報告によると、鋸歯状病変の診断一致率は60-80%だったそうです。
昨年から診断一致率が低下していて気になっていましたが、病理医B, Dの先生以外では昨年度の当院でも診断一致率71%で、及第点でした。
当院の病理診断を担当いただく先生は全員、東海地方の各大学病院で現役で活躍されている先生方です。
「鋸歯状病変」の区別以外の、良性・悪性の区別や、潰瘍性大腸炎・カルチノイドなどほかの疾患については、全員当院の内視鏡診断と一致していました。
「鋸歯状病変」の区別だけは、大腸の病理診断にかなり慣れている先生でないと難しいのかなと感じました。
内視鏡医は、病理診断の結果が自身の内視鏡診断と異なっていた場合に、内視鏡診断を見直すことで診断技術を磨くため、正しい病理診断はとても重要です。
一番重要な、良性・悪性の診断については100%一致しているので大きな問題はありませんが、当院では鋸歯状病変の区別にこだわって診療していきたいので、今年度の病理診断は病理医A・Cの先生を中心にお願いしました。
今年度も、不要なポリープ切除を極力減らすことができるように、内視鏡診断精度を高めていきたいと思います。