大腸ポリープについて
ポリープとは、粘膜上にできるいぼ状に隆起したできものです。大腸ポリープは大腸の粘膜にできるポリープです。
大腸ポリープは腫瘍性のものと、非腫瘍性のものに分けることができますが、このうち非腫瘍性のポリープには過誤腫性ポリープや炎症性ポリープ、過形成ポリープなどが含まれます。
一方、腫瘍性ポリープは細胞が異常に増殖するタイプのポリープで腺腫や鋸歯状病変(SSA/P)などがこれに含まれます。
大腸ポリープは60%が直腸からＳ上結腸にできます。腫瘍性の腺腫やSSA/Pという種類のポリープは、本来は良性のものです。しかし、このタイプのポリープは放置すると一定の確率でがん化することが知られています。
これらのリスクの高いポリープは形状で鑑別ができますので、大腸カメラ検査の際、見つけたらその場で切除する日帰り手術を行います。切除することで将来がん化することを予防できます。
大腸ポリープは
がん化する可能性が
あります
大腸ポリープのうち腺腫は基本的には大きさによって、がん化する可能性があります。9mm以下の場合、がん化する確率は15％以下ですが、20mmを超えたものはがん化するリスクが65％を超えます。
また、切除したポリープの病理検査では、5mm未満のポリープにがん細胞が含まれていた割合は0.4％, 10～14mmでは12%, 15-19mmでは20.7%, 20mmを超えたものでは25％以上まで上昇しています。
5mm未満のポリープでも、将来のがん化のリスクや、すでにがん化している危険性があるため、当院ではサイズに関わらずすべての腺腫およびSSA/Pについては、見つけたら積極的に切除をしています。
大腸ポリープの
原因・できやすい人
大腸ポリープ・大腸がんと食生活の関わり
大腸ポリープや大腸がんの発症リスクは食生活との関与が指摘されています。とくに欧米型の高脂肪、低食物繊維食や、赤身肉・加工肉は大腸がん発症のリスクが高まると考えられています。
一方、野菜や果物、食物繊維は大腸がんの抑制効果が指摘されていますが、積極的な摂取での予防効果は証明されていません。
大腸ポリープ・大腸がんと遺伝
親、兄弟、叔父、叔母、甥、姪、いとこなど血縁者に大腸がんが発症しやすい家系があります。これを遺伝性大腸がんといって大腸がん全体の5％程度がこのタイプだと言われています。
また、家族性大腸腺腫症といって、血縁者の間で大腸ポリープが多数発症する傾向にあるタイプや、リンチ症候群といって、大腸がんやその他小腸、子宮、腎臓、尿路などに同時多発的、または異時多発的にがんが発症するタイプなどが遺伝と関わっていると考えられています。
大腸ポリープ、または大腸がんに罹ったことのある方は、40歳に満たないうちから、定期的に大腸カメラ検査を受診することをお勧めしています。
生活習慣から大腸ポリープ・大腸がんを予防する
大腸ポリープや大腸がんの発症リスクには、食生活や嗜好品、生活習慣が関与しています。リスクを高めるのは、高脂肪、低食物繊維食、香辛料などの嗜好品、過度の飲酒、喫煙習慣、肥満、運動不足などです。なかでも過度の飲酒、喫煙習慣は特に大腸ポリープや大腸がんの発症と強く関係しています。
逆に言えば、これらを避け、脂質控え目で食物繊維の多い食事、嗜好品やお酒は適量に、禁煙を心がけ、肥満を解消し、適度な運動を続けることで発症リスクは低下することになります。
さらに、年齢（50歳以上）、家族歴などもリスクと関係しますので、該当する方は定期的な大腸カメラ検査が推奨されています。
大腸ポリープ切除
（日帰り手術）
当院では、大腸カメラ検査の際、ポリープを見つけた場合、切除が必要なものかどうかを鑑別し、必要なものについてはその場で切除してしまう日帰り手術を行っております。
手術方法としては、10mm以下の小さいポリープ、10mm～20mm程度の大きめのポリープ、茎のないポリープなどによって異なります。詳しくは「大腸ポリープの切除法」をご覧ください。
以前に大腸ポリープを切除した方や血縁のご家族にポリープや大腸がんを発症した方がいらっしゃる場合、定期的に大腸カメラ検査を受診されることをお勧めしています。詳しくは当院までご相談ください。
大腸ポリープ切除の所要時間
大腸カメラ検査は、盲腸までスコープを挿入し、引き抜くようにしながら大腸全体の粘膜を観察していきます。
所要時間はおよそ15分程度です。ポリープの切除が加わったとしても、長くて30分以内に終了します。
大腸ポリープ切除の
手術法
大腸ポリープ切除の日帰り手術は、ポリープの大きさや形、種類に合わせて、以下の3つから最適な方法を選んで行います。
ポリペクトミー
スコープの先端から投げ縄状のスネアという高周波メスを出して、ポリープの茎にひっかけ、高周波の電流を流して茎を焼き切る方法です。焼き切ったポリープはスネアでつまんで回収します。高周波電流による止血効果がありますが、粘膜下層などに熱によるダメージが残りやすく、手術後の出血や穿孔などのリスクがやや高くなります。
10～20mm程度までのポリープの切除に適用します。
コールドポリペクトミー
スコープの先端からスネアを出して、ポリープの茎にかけて、通電せずにそのまま締め付けて扼除します。
切除したポリープは内視鏡の鉗子口から吸引して回収します。一時的に出血することがありますが、下部組織に熱によるダメージが残らないため、手術後の出血や穿孔のリスクは少なく安全です。10mm以下のポリープに適用します。
内視鏡的粘膜切除術（EMR）
主に茎がなく、スネアをかけることができないタイプのポリープの切除法で、早期の大腸がんなどに適用することもある方法です。ポリープの下に生理食塩水を注入し、ポリープを浮かせて人口的に茎を作り、そこにスネアをかけて通電し高周波を流して焼き切ります。切除したポリープはスネアで挟んで回収します。
生理食塩水が緩衝地帯になって、高周波による熱のダメージが下部組織に伝わらず、安全に切除できます。
大腸ポリープ切除後の
痛みはありません
通常、大腸の粘膜層には知覚神経が通っていません。そのため、日帰り手術による切除の後に腹痛が起こったりすることはありません。
ただし、稀に出血や穿孔などの合併症が起こった場合には、粘膜下層以下には知覚神経が通っていますので、痛むこともあります。
とくに大腸カメラでの手術は技術力の差が現れやすい傾向がありますので、日帰り手術を受ける際は経験豊富な医師のいる医療機関を選ぶようにしましょう。当院では内視鏡の操作は、日本消化器内視鏡学会の専門医・指導医に認定されている医師が行いますのでご安心ください。
大腸ポリープ切除後の
注意事項
大腸ポリープの切除は日帰りとはいえ、手術ですので、まったく合併症の危険がないわけではありません。そのため、手術後も1週間程度は医師の指示を守って慎重に行動してください。詳細については手術の際、注意点のリーフレットなどをお渡ししますので、そちらをご覧ください。
切除当日は入浴を控えてシャワーで軽く汗を流す程度にしてください。
1週間程度は激しい運動を控え、またお腹に負担のかかる姿勢、作業は控えてください。
1週間程度は長時間の自動車、バイク、自転車などの運転は控えてください。
1週間程度は、遠方への出張、ご旅行なども控えるようにしてください。
とくに飛行機を使った旅行は気圧の関係で後出血や遅発性穿孔のおそれが増しますので控えてください。
大腸ポリープ切除後の
食事
大腸ポリープの切除後、1週間程度は消化が良く胃腸に優しい食事時を心掛けましょう。
とくに脂質が多い揚げ物やラーメンなど、また辛口の香辛料の多い食べ物など、海藻類、きのこといった食物繊維の多い食品は避けるようにしましょう。
飲酒は出血のリスクが高まりますので、医師の許可がでるまで控えてください。